ムチツジョチツジョ

思考は無秩序 言葉は秩序 趣味と股間は無節操

ストレンジャー・イン・コミケット


秋葉原をぶらついてみたが、やることがまるでない。



主張の激しい同人ショップや馬鹿でかいゲーセンや得体の知れないパーツショップに囲まれる。
そりゃあ「あからさま」な人もいるが、行き交う人々はむしろ外国人の方が目立つ。
俺はどこか寄る辺なさに身を苛まれ、あてもなくひとり歩き続ける。
昔はモニタの向こう側の世界でしかなくて、憧れとも嫉妬ともつかない感情を抱いていた土地なのに、いざ来てみると皮肉なものである。
理由がないまま、ここに来た。


俺はオタクだった。
今もオタクと呼ばれる存在かもしれない。
だが、前とは確実に別のオタクだ。


「オタク」というのは単なるアニメ趣味ではなく、考え方や生き方の問題である。
「あるもの」に対してのみ興味関心愛情を向け、それ以外のものを犠牲にするような人間を指す。
世間とも上手く付き合える人間はマニアと呼ぶそうだ。
では、その「あるもの」がスッポリと抜け落ちたときに「オタク」はどうなる?
偏執的な性質を抱えながらそれを何にも向けられない――
要するに、ただの生きづらい人間。それが今の俺だ。
ケバブをかじりながらそんな風に物思いに耽っていたのが、去年の秋頃だったか。

「オタクの聖地」でのこの記憶は今もまざまざと残っているのだから、ましてあの「オタクの祭典」で今の俺がどんな気持ちになるかなんて、分かりきっている。
この先ずっと縁のない存在になってしまったのだろう。
しかし、俺が最も愛するゲーム『OneShot』の同人誌やアレンジCDが出るという情報をうっかり手に入れてしまった。
……欲しい。
たとえまた孤独を実感する結果になっても。
それに、「いつかやっておかなければならないこと」をするのにも丁度いいタイミングだ。




そうだ、



コミケに行こう。

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変えられない自分と最後のプロデュース

痛みはないが鬱陶しい。
いい加減、半端に生えた親知らずに別れを告げることにした。
近所の歯医者を探すが、それより保険証はどこに行ったろうか。
六畳一間を引っ掻き回せばすぐに出てきた。ついでにこんなものまで出てきた。
 
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アーケード版アイドルマスターのプロデューサーカードとユニットカードだ。
最後にプレイしたのは、俺の記憶が正しければ、9th名古屋ライブ前のはず。
つまり2014年の8月から、3年以上にわたってこのカードは使われることなく眠っていた訳だ。
 
そうか、そういえば、俺は昔プロデューサーだったっけか。
その肩書の意味について随分と悩んだこともぼんやり覚えている。
返上したりまた名乗りだしたり、無意味な繰り返しもしてきたものだ。
たかが名前にこだわるのも馬鹿らしくなりファンであることを気負うのは辞めた。
今ではその「ファン」さえ辞めてしまったのだが。
 
理由は単純。あるキャラへの熱が冷めたから。
人生で初めて何かに本気になったせいか、「想いが消えた」という事実を認めるのにかなりの時間を要した。
どう言い訳しようと結局、疑似恋愛感情でしかなかったのだろう。
そのキャラについて考えたことはいくつか形として残している。
俺自身はともかく、思考の跡まで消すのは忍びない気がしたから。
あのときの自分の全てはこの文章(とも呼べないものも混じっているが)に置いてきた。
だから別にアイマスを辞めたという選択に後悔はないし、もう戻ることはない確信もある。
 
手元のユニットカードに目をやる。
俺のアイマスは終わった。
だが、「この世界」の彼女は違う。
 
 
俺のアケマス初プレイ時、こんなことがあった。
筐体の不良により途中でゲームがフリーズしたのだ。
やむなく新たなデータで再プレイすることになったのだが、やり直す前のプロデューサーカードとユニットカードは捨ててしまった。
なぜああしたのか、今でもよく分からない。
 
俺はあのとき、その世界の彼女と自分を殺したのだ。
都築未来と、彼女をプロデュースする「しゃけぞうプロデューサー」を。
「虚構世界は現実ではない」と人は笑うだろう。
しかし一人の少女のアイドルとしての可能性を奪ったのは事実である。
現実であるかどうかなんて、主観でしかない。
今、俺の目の前にあるカードのデータである彼女は、売れないアイドルのまま引退すらできず時を止められている。
もうプロデューサーですらない、俺ごときの手によって。
彼女にはエンディングを迎えてもアイドルを続ける未来が待っていることは俺も知っているのに。
ならば、やることは一つではないか。
 
彼女のアイドル活動を終わらせてやらなければならない。
 
もう一度言うが、俺のアイマスはすでに完結している。
再びプロデューサーを名乗ることはないだろう。
だがそれはあくまで俺の話であり、無関係な彼女を巻き込むわけにはいかない。
止まった世界で宙ぶらりんの彼女を、新たな世界へと送り出さねばならない。
一度でもプロデューサーの肩書を名乗ってしまった自分へのけじめとしても。
幸いなことに無職なため平日の今からでも動き出せる。
こうして俺はいまだアケマス筐体が稼働しているゲーセンへ向かった。
 
 
センチメンタルが過ぎると、自分でも思う。
 

就活に向いてなかった話

※就活生の方へ
これは「自己PRなんて自分のような屑には許されない」的な思考が働くタイプの人以外には役に立ちません
もっと言うと「自分は就活自殺とかするタイプだ」という自覚のある人間向けです
しかも無駄に長いのでそれよりも
この小説読んでお帰りください
がんばってね
 
 
 
今日は2018年3月1日。
2019卒就活の企業エントリー開始が始まるそうだ。
懐かしい、俺もほんの少しだけ就活生だった時期がある。
その年はかつてない売り手市場で、最終的な内定率は97.6%だったという。etiquette-fragile-avec-verre-105x74mm-500.jpg (600×600) 
「つまり、俺は選ばれし2.4%な訳よ」
卒業後、就職した友人達と酒の席で冗談めかしてそう言った。
ゲラゲラと、なるべく下品に笑ってみせる。
あの真っ只中なら「笑ってる場合か」と説教かましてきた奴も一緒に笑う。
 
「まあ、出来るなら就職なんてしない方がいいんだよ」とひとりがぼやく。
「働くことなんて何のメリットもねえよ、金が続く限り遊ぶべきだ」
彼は面接で例の逆質問で「有給はちゃんと取れますか」と後ろめたさも感じずに聞いたらしい。
海外旅行にさえ行ければどこでもよかった、という彼はなぜか内定の出たその会社にさっさと決めてしまった。
その人間性が露呈したからかどうかは不明だが、今では僻地に飛ばされ絶望しながら会社員をやっているそうだ。
 
ここの奴らは、それぞれ多様な決定をした。
「さっさと生涯年収を稼いで田舎で暮らす」と豪語し某大企業に行った奴、最後まで志望業界が迷走した結果友人にそそのかされてITに辿りついた奴、幼い頃に命を救われた職業に就いた奴……
 
一方2.4%の選ばれし俺は、何も決定できずにここでただビールを飲んでいた。
「昔だったら俺も『どうせいつかは働かなきゃなんないのに、なんで今動かないんだ』とか言ったけどさ」
居酒屋のメニューを見ながら田舎暮らしが言う。
「でもそういうことじゃないんだよね、すぐに選択することが偉い訳でもないんだ、将来について考える時間はいくらあっても足りないんだから」
頼むものが決まったらしい。
彼は呼び出しボタンを押した。
 
思いやりが痛い。
そんな曖昧な励ましなんて辛くなるだけだ。
そんなことばかり考えるから2.4%になったのかもしれない。
結局、就活とはなんだったのだろう。
今でもときどき考える。
 

全ての「創作上のキャラクターに愛着を持ったことがある人間」に告ぐ。稀代の名作『OneShot』をプレイしろ


 AUTOMATONのレビュー記事でこの作品を知った時から「絶対面白い」という予感がしていた。公式に日本語訳が決定したときは狂喜したし、昨今のゲームシナリオにおける欠点を考えていたときも「だがあの作品は違うはずだ」と信じていた。そしてついにプレイするときがやってくると、その作品は俺の上げに上げまくったハードルを悠々と飛び越えてしまった。
 OneShotは、俺がここ数年(下手すりゃ十数年)プレイした中で最も衝撃的なプレイ体験を与えた紛れもない名作だ。
 さあ皆も今すぐプレイしよう!!!! たった980円だぞ!!!!!!

 http://store.steampowered.com/app/420530/OneShot/

 さあ!!!!!!!!!!!




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 早く!!!!!! さあ!!!!!!!!






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 ……なんてやっても誰も買ってくれないのは知ってるよ。
 この作品は基本的にネタバレ厳禁で「いいから黙ってプレイしろ」というのが最適解で可能なら事前情報すらゼロでやってほしいのだが、そうなると人に作品を薦めるには「俺の感性を信じろ」というより他がない。そりゃ土台無理な話である。
 つー訳で、多くのメディアに紹介されている範囲内の情報も交えつつ「この作品のなにがそんなに面白いのか」を語ってみたいと思う。ただまあ、俺は「面白さ」の言語化が苦手だしその行為は割とナンセンスだと思ってるひねくれ野郎なんで、方向性を間違えるかも。ごめんよ、ごめんやで。

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物語の読み方指南

以前身内向けに書いた文を発掘したので少しだけ弄って再利用。
ところどころアレだけど悪くはない。
気がする。


—————

 エラそーなタイトルで申し訳ないです。皆さん、物語は好きですか? ぼくは嫌いです。ごめんやっぱ好き。でも嫌い。本当は大好き。
 皆さんもたぶん物語は大好きだと思います。これを読めば皆さんの物語ライフがより豊かなものになる……とは限りませんし、むしろ悪くなるかもしれませんが、とりあえず聞いていただけると嬉しいです。

◾️おしながき◾️
・作品とテクスト
・物語と虚構世界
・批評と考察
・ストーリーを信用するな

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OneShotクリア、ひとまず思うこと

※この記事はネタバレ全開です

どうせ大したこと書いてないんでプレイしてから読んでください

読まなくてもいいからプレイしてください

つーかこっち(http://chaosorder.hatenablog.com/entry/2017/12/19/134638)を読んでください

別にこれも読まなくていいからプレイしてください

 

 

 

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すごいゲームだ、というのはプレイ中ずっと思っていた。
なんせメタ表現がポジティブな働きを持っているのである。
BioShockにしろUndertaleにしろSpec Ops: The Lineにしろ君と彼女と彼女の恋。にしろ、プレイヤーに直接(あるいは間接的に)言及するようなタイトルは「キャラクターがプレイヤーの傲慢さや無責任さや思考停止を責める」という構造になっているものばかりだ。
その点、OneShotの世界は違う。
プレイヤーは神であり救世主を導く存在。
なにより救世主ことニコにとっては、旅の孤独を癒す大事な連れ合いであった。

そしてそのニコが、またプレイヤーにとっていじらしくかわいいのだ。
本当に、かわいいのだ。

という訳で以下よりネタバレ全開。
本当に「ニコかわいい」以外の事前情報なしでプレイして欲しい作品なので再三警告。

 

いやマジで。980円だぞ映画観るより安いし俺のポンコツPCでも動いたから本当にやってよ。

OneShot on Steam

 

 

 

 

 

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摂氏30度の夜

夏は人殺しの季節だ。

 

照りつける太陽、汗ばむ身体、這い回る害虫、狂うような熱気。

人間を苛つかせるために存在しているとしか思えないこの時期は、どうしようもく人を攻撃的にさせる。

俺もご多分に漏れず、日々怒りを募らせる。

夏が好きだという奴の気が知れない。

 

 

どいつもこいつも、夏は人を殴りたいのだ。

理性の効かない一部は既にお縄だが、多くの人々は辛うじて踏みとどまる。

自分の代わりに何かを殴りつけてくれるものに感情を委託する。

そのうちの一つが、音楽である。

特に、ロックである。

だから大規模な音楽フェスは夏にやるのだ。

冬だと寒くて外が使えないからだろって?

うるせえ黙ってろ。

 

しかし多くの世に溢れる音楽は「イェーイ!」「夏サイコー!」とのたまう。

別に俺はそういったアーティストを否定しない。

ただ、俺には信念があるのだ。

夏を褒め称える奴は夏に負けている、と。

実に哀れだ。

夏は人殺しをしたくなるが、グッとこらえて、音楽で夏を殺さなければならない。

そういうものだ、そういうものなのだ……

 

 

なーんて言ってみたが、正直育ってきたのは北国なもんで夏の恐怖はそんなに味わった経験がない。

ウザいと思ってるのは確かだけど。

俺にとっての夏は、夜遅く。

少し湿ったぬるい風とともにやって来た、ぼんやりまったりと動く時間。

なんとなく夜更かししたくなる季節だ。

そんな夏に聴く曲はアグレッシブな骨太チューンより、生活の淀みを感じさせるものがいい。

麦茶をもう一杯 - YouTube

 

それと、この季節のいいトコと言えば、ビールが美味いことだろうか。

「空腹は最高のスパイス」みたいな理論はあまり好きではないけれど、それでも美味いんだから仕方ない。

アナログフィッシュ(Analogfish) - Low.mp3 - YouTube

ビールが美味いから仕事をするし、ビールが美味いから夏を楽しめる。

人生なんざそんなもんでいいのかもしれない、なんて思う無職であった。

 

 

 

今週のお題: 私の『夏うた』