摂氏30度の夜
夏は人殺しの季節だ。
照りつける太陽、汗ばむ身体、這い回る害虫、狂うような熱気。
人間を苛つかせるために存在しているとしか思えないこの時期は、どうしようもく人を攻撃的にさせる。
俺もご多分に漏れず、日々怒りを募らせる。
夏が好きだという奴の気が知れない。
どいつもこいつも、夏は人を殴りたいのだ。
理性の効かない一部は既にお縄だが、多くの人々は辛うじて踏みとどまる。
自分の代わりに何かを殴りつけてくれるものに感情を委託する。
そのうちの一つが、音楽である。
特に、ロックである。
だから大規模な音楽フェスは夏にやるのだ。
冬だと寒くて外が使えないからだろって?
うるせえ黙ってろ。
しかし多くの世に溢れる音楽は「イェーイ!」「夏サイコー!」とのたまう。
別に俺はそういったアーティストを否定しない。
ただ、俺には信念があるのだ。
夏を褒め称える奴は夏に負けている、と。
実に哀れだ。
夏は人殺しをしたくなるが、グッとこらえて、音楽で夏を殺さなければならない。
そういうものだ、そういうものなのだ……
なーんて言ってみたが、正直育ってきたのは北国なもんで夏の恐怖はそんなに味わった経験がない。
ウザいと思ってるのは確かだけど。
俺にとっての夏は、夜遅く。
少し湿ったぬるい風とともにやって来た、ぼんやりまったりと動く時間。
なんとなく夜更かししたくなる季節だ。
そんな夏に聴く曲はアグレッシブな骨太チューンより、生活の淀みを感じさせるものがいい。
それと、この季節のいいトコと言えば、ビールが美味いことだろうか。
「空腹は最高のスパイス」みたいな理論はあまり好きではないけれど、それでも美味いんだから仕方ない。
アナログフィッシュ(Analogfish) - Low.mp3 - YouTube
ビールが美味いから仕事をするし、ビールが美味いから夏を楽しめる。
人生なんざそんなもんでいいのかもしれない、なんて思う無職であった。
今週のお題: 私の『夏うた』